星の涙
次に視界が開けた時、巧が見たものはとても酷い光景だった。

周りは燃え上がる炎に包まれた家が立ち並び、叫び声と子供の母を呼ぶ声が絶えず響いている。

体は大木の近くにいた時よりも熱い熱気で汗が滲み出てきた。

しばらくこの悲惨な光景に茫然としていると、いきなりズボンを何かに引っ張られた。

「おわっ……!!」

反射的に掴んできたものを振りほどき、何かと振り返る。

「……兄ちゃん……」

そこには同い年くらいの少女が瓦礫に体を挟まれた状態で巧の周辺に視線を向けていた。

腰から下は完璧に埋まっている。

紺色に風鈴と金魚の模様がついた浴衣。
そして三つ編みにされた髪型。

この女の子……。

巧は少女を見て、あの夢に出てきた謎の少女を思い出した。

「お兄ちゃん……」

少女はもう一度か細く兄を呼ぶ。

「俺はお前の兄貴やないっ……」

「お兄……ちゃん……」

次第に少女の声が聞こえなくなってきた。

この時巧の頭は助けるなんて言葉など浮かんでこなかった。

何せこのような状況に遭遇したことがないのだ。

人が瓦礫に挟まれているのも、目の前に死にそうな人がいることも初めて。

その上わけのわからない場所に突然来たのだ。

何もかもが混乱して頭の中をうまく整理できない。
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