星の涙
「動くんじゃねぇ!!」

男が巧に向かって叫んだ。

風が吹き、熱気が巧の顔にぶつかる。

焦げた臭いが鼻につく。

この風の中にはかなりの二酸化炭素が含まれているだろう。

二酸化炭素は空気よりも重い。

このままでは少女は中毒を起こしかねない。

巧は一瞬だけ男のほうを見ると、すぐにそれを無視して瓦礫の山をどかし始めた。

崩れないように慎重に瓦礫をどかす。

その度に細かい破片が少女の頭に降りかかる。

「手で口押さえてろ。できるだけ息もすんなよ」

巧は少女にそう指示すると、少女は小さく頷いて指示通りにした。

巧を見て何かあると気づいたのか、男は棒を両手にじりじりと近寄ってきた。

しかしやはり警戒が強すぎるのか、一定以上の距離を保ったところで近寄るのをやめる。

そのまま何をするでもなく、巧の行動をただじっと見つめたまま。

それに痺れを切らした巧は、大声で男に叫んだ。

「見てねぇで手伝え!!人一人の命がかかってんやで!!」

一瞬男はビクついたが、すぐに近寄ってくると顔がいっきに青ざめた。

「千夏!!」

男は叫ぶとすぐに巧の横で瓦礫をどかす作業を始めた。

どうやらこの少女は男の知り合いらしい。

「千夏、死ぬんじゃねぇぞ!!おじさんが今助けてやるからな!!」
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