星の涙
数分間2人で瓦礫をどかしてみたものの、瓦礫は減ることがなく、むしろ千夏を苦しめているだけでしかなかった。

「坊主、千夏見てろ。助けを呼んでくる」

いつまで経っても拉致があかないと判断した男は、巧に千夏を任せるとどこかへ走り去ってしまった。

千夏の体力も限界にきている。

いつしかサイレンは止み、飛行機も見当たらなくなっていた。

早くしないと本当にこの子は死んでしまうかもしれない。

「おいっ、こっちだ!」

掛け声とともに数人の男達が巧の前に現れた。

皆上半身裸で、足袋を履いている。

その中にはあの男も混じっていた。

「お前はどいてろ。あとは俺たちがやる」

そういうと男達は千夏の上に乗っかっている重い瓦礫をどかし始めた。

大男3人でやっとの瓦礫を持ち上げると、その間からあの男が千夏を引っ張り出す。

「よし、いいぞ」

男は千夏を抱きかかえると、一番安全な場所を探し、そこにゆっくりと寝かせたると、口元に耳を寄せた。

「大丈夫。しっかりと息はしている」

その声を聞いて男達が安堵の表情を浮かべた。

それを見ていた巧もよかった、と安心したが、すぐにその表情は硬くなった。

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