星の涙
必死に鳴く蝉の羽音が耳にしつこいくらい纏わりつく。

もしかしたらもの凄く近い場所で蝉が鳴いているのかもしれない……。

そんなことを考えながら目を開けると、そこに映ったものは自分が昼寝に来ていた山の上だった。

空は青く、雲1つ無い。

「いてっ……」

軽く手を握ろうとしたが、ヒリヒリとした刺激が脳に伝わった。

ゆっくりと首を右に傾ける。

右手はいくつか皮が剥け、血が滲んでいる。

俺……、こんな寝相悪かったっけか?

むくっと起き上がると、巧は大きな欠伸をした。

カバンの中にしまってあるケータイを取ろうとした時、巧はある変化に気づいた。

「堪忍してぇや……」

お気に入りの白いTシャツが真っ黒に汚れていたのだ。

煤臭く、泥以外の汚れも付いている。

大きくため息をついた後、巧ははっと思い出した。

シャツが……汚れてる?

今見た夢と同じだ。

けどどうして?

どうして夢に出てきたことが現実にも起こってるんだ!?
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