星の涙
幽霊。

自然とその2文字が浮かび上がってきた。

既に死んだ千夏という少女が、成仏できずに今も尚ここに居座っているのかもしれない。

もしかしたら夏休み中毎年ここにくる俺を知って、何かを伝えに現れたのかもしれない。

それなら自然と辻褄が合うじゃないか。

しかし千夏は何を伝えようとしているのだろう。

夢の中で千夏は俺を「お兄ちゃん」と言っていた。

俺があれだけ否定したんだ。

あんな状態だったとしても「お兄ちゃん」と繰り返す必要性はない。

それとも俺に何か関係あるのか?

俺が千夏の兄貴に似ている……?

だとしたら千夏は俺の先祖にあたる存在なのだろうか。

「あーもう、やめややめや!!」

両膝を思いっきり叩く。

「いって……」

その瞬間傷のある手のひらに痛みが走った。

これ以上考えたって拉致があかない。

ただの夢。

千夏なんて少女は架空の人物だ。

彼女を持ったことがないからこんな妄想をしちまったんだ。

それが具現化して幻を見た。

はい、解決。

よし、終わりだ!!

巧はカバンに雑誌を詰め込むと、山を駆け下り自転車を暴走させた。
< 21 / 27 >

この作品をシェア

pagetop