星の涙
その夜、千夏は夢を見た。

幼い頃の自分が、頭の中の映像に映し出される。

空は青く、澄んでいた。

丘にある大木は青々と茂り、その周りには多くの野花が咲き乱れている。

そこで幼い千夏は1人、花かんむりをせっせと作っていた。

1本、また一本と、シロツメクサの花を丁寧に編みこむ。

これでもう3つ目だ。

1つは母親のために、もうひとつはよく遊ぶ千代のために。

今作っているのは、12歳年上の兄の誕生日プレゼントのためだ。

その様子を、千夏は天から見下ろすように見ていた。

あぁ、こんな日もあったな……と、その思い出ひ浸った。

こんな夢をよく見る。

誰かの思い出が千夏の夢に出てきて、あたかも自分の思い出のように映し出されるのだ。

その大半が死んだ者の仕業だが、時にそれは、予知夢になる。

未来のことが視え、それが実際に起こる。

時代は現代から遥か先のことまで幅広い。

それが、千夏の持った、もう一つの能力だった。
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