星の涙
奪った西瓜を綺麗に平らげ、ひよりが5つ目の西瓜を手に取ろうとした時。

「ひより、その辺にしとき」

台所で洗い物をしていた母がひよりを叱った。

「あんたは食べすぎなんよ。昨日ダイエット宣言してたやないの」

母が手をタオルで拭きながら居間へ顔を出す。

近所でも人当たりがいいと評判の母は、現在近くのスーパーでパートを勤めている。

そのパート先で度々果物や野菜を貰ってくるのだ。

この西瓜もその一つ。

見た目などで売り物にならなくなった食品でも、家計をやり繰りしなくてはならない母にとっては、それはもう大助かりである。

ひよりは出しかけた手を引っ込め、西瓜じゃ太らんっ!と言ってぷいっと居間を離れていった。

洗面所で手を洗う音が聞こえたかと思うと、荒っぽい足音をたて、2階へ駆け上がり、乱暴にドアを閉める音が聞こえた。

「やっぱ可愛いない……」

巧はもう一度呟くと、2つ目の西瓜を食べ始めた。
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