星の涙
目を開けると、視界に入ったものはいつもの風景。

平凡で、穏やかな町。

「なんや……今の」

巧の体に触れた少女は一体誰なのだろうか。

まるで戦争のような映像が、今でも頭の中に流れてくる。

巧にはまるで縁のない光景だ。

人の悲鳴や、大きな爆撃など一生でほとんど聞かないだろう。

それが何故巧の夢の中に入り込んだのか。

巧自身、わけがわからなかった。

夢というのは非現実のものだけれど……。

体を起こし、頭をボリボリと掻く。

気分転換に裏山に来たはずなのに、これでは帰宅しても宿題に手がつかない。

あまりにも衝撃的過ぎる、目覚めの悪い夢だった。

「ふわぁ……」

大きな欠伸を一つすると、巧は大きく伸びをした。

陽はとっくに傾いている。

空全体を真っ赤に染める夕焼けは、巧の見た夢と同じ、燃え盛る炎のようだ。

今にでもあの少女の声が聞こえてきそうな予感がする。

そんなことを考えながら、巧はまた大きな欠伸をした。
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