星の涙
少女は尚も巧の体を揺さぶり続けた。

最初はひたすら我慢していたが、だんだんと強く揺さぶられ、とうとう巧は体を起こした。

揺さぶられる感覚があるのだ。

夢じゃないことくらい少なくともわかる。

「やっと起きた。たぬき寝入りはよくないよ?」

巧の横で正座をし、手を膝の上に置いてにこりと少女は笑う。

巧はあ゛ーもうっ!!と頭を掻きむしると、少女を強く睨みつけた。

「てめぇー誰だよ。夢に出てきた女だろ?」

少女は巧のいきなりの変貌に対応できず、きょとんとした後巧を叱りつけた。

「“てめぇー”なんて言葉はよくないよ。言葉は綺麗に使わなきゃ」

「うっせぇーな。親みたいなこと言ってんじゃねぇーよ」

突然夢に出てきた少女。

かと思ったら現実に目の前にも現れた。

その少女に会って早々説教をくらう。

巧にはわけがわからなかった。

初対面の少女に何故言葉が悪いと叱られなければならない?

少しずつだが確実に、巧の怒りはこみ上げていた。

叱ってきた少女に更に強く言葉をぶつける。

「名前くらい言えよ。人の安眠邪魔しやがって……」

巧はぶつくさぶつくさと独り言を始めた。

本当なら快適な起床ができるはずだったのに……と。
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