マリオネット・ワールド <短>
Nietzscheはまがい物ではなく、間違いなく天才だった。
他人と寄り添う必要が一切ない、絶対的強者だった。
自分が強い者は、誰かに助けなど求めたりしないから、手を繋がなくても生きていける。
裕福な人が、貧乏人と平等に金を分け合おうとは思わないのと同様、
弱い者は、強くなりたいと願うが、その逆は有り得ない。
ソイツらと結託したいだなんて、思うはずがないのだ。
上にいるものは、下の気持ちなんて、わからない。
だから、弱者の気持ちなど、わかるはずはない。
要するにあれだ。
誰も彼も、馬鹿も天才も、大人も子どもも、皆自分の視点からものをみる。
自分が1番なのだ。
そして私は、間違いなく現代の強者。
男ウケする顔。
どんなことでも素早く処理できる頭脳。
わかりやすく言えば、勝ち組。
だけどかといって、満ち足りた感情、キラキラの景色に毎日が溢れているというわけではない。
私の目には、モノクロの風景。
耳には、冷え切った空気の音しか聴こえない。
それが、何でも手に入ってしまうが故の代償だとしたら、もはや諦めるしかない。
それでも、いつ“死”を目の前にしても、この世界に心残りはないと思いながら、
その前に、何かひとつくらい、胸を突き破るくらいの何かを感じてから、この瞼を閉じたいと望んでいる自分がいる。
この冷え切った感情を奮い立たせてくれる“何か”を
きっと心の奥底では、狂おしいほど求めているのだ。
なんでもいいから、何か。
何か、何か……
私を突き動かす衝動が欲しい――