マリオネット・ワールド <短>
「アンタはさ、なんで生きてんの?」
男からの、何の脈略もない唐突な質問。
それこそ無意味だと思える会話だが、二人の間に限っては
互いの名前を知るよりも、重要な役割を担っていた。
「死ぬ理由がないからかな。そういうアナタは?」
「心臓が動いてるから」
「そっか……」
チグハグなままで途切れる、二人の会話。
間違っていないはずなのに、まるで所々がほつれているかのような言葉だった。
そして、普通だとは言い難いやり取りはまだ続いていく。
「私、今アナタと仲良くなろうと頑張ってるんだけど」
「違うだろ?俺の中身を覗きたいだけだろ?」
鳴海悠はひと息つき、そこで諦める。
佐伯歩という人物と、同等の位置で並ぶことを。
「お見通しね。でも、世の中は一期一会なんだから、もっと大切にしなきゃ」
「一期一会?確かにそうだな。だけどそれがどうして、大切にしなきゃいけないってことに繋がるんだ」
「だから、一期一会だからよ」
「意味がわからない。一度きりだとして、取るに足りない奴なんてこの世に5万といるだろ」
「……確かにね」
「だからその方程式は不正解」