マリオネット・ワールド <短>
想定
「完全犯罪は……有り得ない。だけど、それに限りなく近付けることはできるとは思う」
「へぇ」
佐伯歩は、興味深そうに首を上下に動かして、瞳を光らせた。
「“警察に捕まらない”ってことが完全犯罪だっていうなら、簡単じゃない?」
「例えば?」
「……アナタは?」
少し考えた後、鳴海悠は、あえて手の内を明かすことをもったいぶり、佐伯歩の出方を伺う。
「そうだな……幽霊にやってもらうとか?」
「へ!?」
鳴海悠は、ほんの一瞬だけ顔をしかめて、驚愕に瞼を目いっぱい開いた。
それでも、佐伯歩の表情は何ひとつ変わらない。
初めからフザけた物言いをしているせいかはわからないが、冗談を言っている風にも見えなかった。
鳴海悠の疑りの目を知りながら、佐伯歩は、まるで方程式を解いているかのように、
淡々とした口調で、言葉を続ける。
「それだったら、絶対捕まらないだろ」
「……意外ね。そんな非科学的なこと言うなんて。らしくないんじゃない?」
「非科学的?」
ちょうどフレームの下に隠れた眉が、少しだけピクリと動く。