マリオネット・ワールド <短>
ウンザリした声を出す男に、鳴海悠は更に突き詰めた質問を試みた。
「じゃあさ、人は死んだらどうなると思う?」
「何それ」
「東洋思想ではさ、輪廻転生っていうじゃん?」
「あぁ。死んでも来世で生まれ変わるってやつね。有り得ないだろ」
「へぇ。それは信じないんだ」
「俺が言ってる幽霊は、そういう意味じゃないから」
自分の言わんとすることを、まだ理解していない鳴海悠に、
佐伯歩は、失望のため息を吐きながらそう言った。
一瞬ひるみかけた鳴海悠だが、ここで引き下がっては、今後二度と訪れないかもしれない千載一遇のチャンスを
みすみす逃がしてしまうということを意味するのだと知っていたから、素知らぬ振りをして続けた。
「私、哲学勉強してるんだよね」
「……」
意味のないことに、男は解答しない。
「東洋思想は嫌いだったから、輪廻を肯定されないでよかった」
「俺がどんな考えを所持していようが、アンタには別に関係ないことだろ」
「大ありよ。だって、アナタには勝てそうにないもん。
私が今まで感じてきた何もかもを、根本から覆されてしまいそう」
男の心は、依然として女よりも高い位置にあった。
手を伸ばせば引き寄せられるような、そんな近場にあるようで、
強固たるガラスで覆われ、決して触れることはできない場所に……
「つかさ、哲学とか勉強して、なんの役に立つわけ?
現代社会をつくってんのは、俺達みたいな科学的人間と、法律と画策を勉強した奴らだぜ?」
世間一般では、あまりに横暴な意見。
けれど、女にとっての正論。