マリオネット・ワールド <短>



鳴海悠は、長年求め続けていた胸に疼く何かが零れ出すのを、確かに感じていた。



「そんなのあるの?」


「ある。誰にもできるってわけでもないが」


「何!?」



鳴海悠は、天才が解く“完全犯罪”という方程式の解を急いた。

佐伯歩は、変わらず余裕の表情のまま続ける。



「簡単なことだ。自分を愛させればいいんだよ。気が狂うほど、溺れさせれば、な」


「……え?」



白く手入れされた歯を出して、佐伯歩はいやらしいほど、自信に溢れた顔をした。


ゾクッとするような恐怖をまとう……

そんな笑顔だった。



その姿を身震いするほど美しいと感じるのは、世界でただ一人……

この女だけなのかもしれない。



「自分を愛させて、その後で深い絶望を与え、自ら死を選ばせてやればいい」


「そんなことできるの?」


「ある程度の条件を満たす人選をすれば」


「例えば?」



鳴海悠は、男からおもむろに出てくる次の言葉を待ちきれず、

間髪入れることなく、言葉の続きを求めた。



「簡単に言えば、誰もいない奴。大切なものや、守らなければならないものがない奴。

ソイツの隙間だらけの心に、俺だけしか居ないと錯覚させる」


「じゃあイジメられっ子とかいいかもね」


「あと、身内もいない方がいいな」


「それから、なるべく性格は陰険な方がいい」


「よくわかってるじゃないか」


「まぁね」


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