マリオネット・ワールド <短>



「ま、女の方が利用しやすいから、アナタの方がやるならいいかもね」


「そうか?女は案外あざといぞ。男の方が損益なしで動いてくれる。

この根拠は、脳の構造上のことで、科学によりきちんと立証されている」


「あ、説明はもういらないから。どうせ聞いてもわからないし」


「……」


「私は、科学のことはわかんないけど、心理的にアプローチしてくね。

これは、私の経験論から言うけど、男の方がイザという時、優しくなっちゃう。

だからきっと、土壇場で尻込みして逃げるよ」



掛け合いが止まり、男は少しだけ考え込んでから言った。


まるで、いとも容易いことのように――



「いいぜ。やってやるよ。その変わり、お前も協力しろよ」


「……もちろんっ!」



女の言葉の何が、男の琴線に触れたのかは定かではないが、

流されるはずのない男の心が、確かに動いた瞬間だった。



男の妖気な微笑が麻薬なのだということに気付いた時、

女は、もうすでに後戻りできないところに居た。



……完全なる手遅れ。


しかし、だとしても女にとってそれは、もはやどうでもいいことでしかなかったのだ――



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