一番は君
「進也は恥ずかしがり屋だから許してな」
 雅志さんは苦笑した。難しいお年頃なんだよ、と野崎の出ていった方を見ていた。
 俺はあいつに嫌われているのかもしれない。
「野崎はどうして学校に行かないんですか?」
 唐突だった。けど、気になる。俺は正直な性格で嘘が嫌いだから。
人を傷つけてしまう言動が出る。
「あ、それは。進也が・・・えっと」
 雅志さんは言葉を濁して言いづらそうだ。
 やはりこの内容はまずかった。
 大声で謝った。どうも人に踏み込める境界線がわからない。聞こえただろうか。部屋へ戻ってしまった、あいつに。傷つくだろう。ますます悪影響を及ぼしたらそうすればよいか。

 雅志さんは大きく息を吸った。
「進也は人間嫌いなんだ。だから人と話すと疲れちゃうんだよ」
 わかるだろう。
 雅志さんが目で言った気がした。
 その内容は簡潔だったが、納得した。そういえば、クラスにあまり溶け込んでいなかった。野崎、いや野崎進也は優等生の部類だった。
 その中でも仲間に入ろうしないで、いつも一人でいた。いつも一人で何していたんだろう。
 疑問があがった。俺はますます野崎のことを知りたくなった。けど面倒な気がして歯止めをした。
 雅志さんに帰ります、と伝えてドアに手をやった。
 しかし、また足止めをされ首だけ振り返った。
「これ、俺からの些細な粗品、プレゼント!受け取って」
半ば強引に手渡されたのは一冊の使い古したノートだった。
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