一番は君

ノート

うっすら消しゴムのカスが表紙に付き、題名には『日記』と書いてあった。
疑問に頭を傾けた。
「あっ、これ家でね。家で見てね、ね。今日はありがとう。またいつか会いましょう」
 そして家から閉め出された。
出た途端、今まで部屋の暖房によって暖まったからだが急に冷えだした。手袋をポケットから出し、はめた。
玄関に置いてあった自転車に乗り、ペダルを踏みながら思った。
-――絶対学校行きたくない。今更だし。

俺はそれを実行した。
母さんに散々、叱られた。だって俺、ただ人助けしただけで。軽いげんこつを頂いた俺は部屋にこもった。
別に学校に友達なんていないしよ。
 雅志さんにもらったノートを早速カバンから取り出し開いた。
「ん―――なに。『十一月一日。西形と富山にいじめられた。俺が先生にひいきされて嫉妬して。筆箱からペンを抜いて、そこらに散らかした。恥かいた。そんなことしたって先生は俺を気に入っているから仕方ないだろう。先生に言ってよ。そんなことするくらいなら、てめえらの顔どうにかしろ。もう、消えてしまえ。・・・これってあの西形と富山のこと? ん、ほかは斉藤に龍原か・・・これって全部二年の時のクラスのやつらじゃん。ってこれ書いたのは、あいつか。野崎進也』

俺は不思議な気持ちでそれを見ていた。裏ではこんな小さく汚い醜態じみたことが起こっていたんだ。知らなかった。俺の名前はどこを探しても見当たらなかった。なんで、載ってないんだ。クラス全員は一ヶ月間何かしら接しているはず。
俺の名前は・・・
そうか。ろくに話したことなかったんだ。
人の気持ちって無塚しい。何を秘めているのかわかったもんじゃない。
俺は電話の掲示板から二年の時の連絡網片手に、
野崎進也
の家へ電話をかけた。
「あの・・・進也君いますか?」
どうやら俺はおせっかいやろうらしい。進也を普通の生活に戻し、救いたいと思った。
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