―Destiny―
「あぁ、いえ。今日はもう遅いので……。また日を改めて来ます」
こんなにも緊張感が漂っているうえに、尋常ではないお母さんの態度……。
奏汰は丁寧に断ると、お父さんとお母さんに頭を下げ、家を出た。
「……奏汰、ごめん。なんか、お父さんもお母さんもビックリしていたみたいで」
車の前で奏汰を呼び止め、あたしは必死になって弁解する。
「いや、それはいいんだけど……」
言葉を濁しながら、奏汰は車の鍵を手でもてあそぶ。
「柚のお父さんたち……、俺のこと知っているのかな」
「……まさか……。知らないはずだよ。【来来軒】に行ったこともなさそうだったし」