―Destiny―
家のすぐ前に横付けされた、黒塗りの車。
運転席の窓から、タバコの白い煙がゆらゆらとこぼれている。
助手席のドアを開け、
「お待たせしましたー」
あたしがそう言って乗り込むと、奏汰は少し身体をずらす。
それは、毎回、奏汰に抱きついてくるあたしを受け止めるための準備。
当たり前のように奏汰に抱きつくと、奏汰は自然に受け入れ、あたしの頭をポンポンと優しく撫でた。
「……昨日はごめんね」
車を走らせてすぐ、あたしは昨日のお父さんとお母さんの態度について詫びた。
奏汰は小さく笑ったあと、「気にしてないよ」と返す。