―Destiny―
■ ふたつの指輪
――はじめて知る奏汰の家庭環境。
だけど、複雑なのはそれだけじゃなかったんだ。
「これはあたしの弟、永輝だよ」
「永輝……さん」
「奏汰が生まれる前に事故で死んじまったけどな」
お母さんはソファから立ち上がって、遺影の前に手向けられている花を整える。
あたしも続くようにして、遺影の前に立った。
よく見ると、テーブルの上には遺品と思われるものが置いてある。
アクセサリー、ジッポ、サングラス……。
遺影のなかで静かに微笑んでいる、永輝さん……。