―Destiny―


「俺とお母さん、どっちが大事?」



そんな残酷な選択を柚に迫る。


大切な親友を失った柚のお母さん。

忘れたくても、忘れることのできない過去。

その一因が、俺という存在によって鮮明に蘇る。



大切な娘が俺と出会って。

お母さんは俺を見るたびに、昔のことを思い出すに違いない。



「……なんで、そんなこと言うの? 奏汰は……」



俺は、柚の顔を包み込んだままだった両手を、静かにそっと離した。



「俺は、柚の家庭を壊したくないよ――」


「奏汰……っ」


< 170 / 328 >

この作品をシェア

pagetop