―Destiny―


結崎さんがバイトを辞めてから、一度だけ、かんなさんと一緒に店に来たことがあった。

その時バイトに入っていた柚羽は、かんなさんと鉢合わせしてしまって……。



あの時の結崎さんの表情が忘れられない。


すごく辛そうな顔をしていた。

バックルームに逃げ込んだ柚羽の後ろ姿を、いつまでも見ていた。



何かがある、と、気づいたのに。

私は柚羽に訊くことができなかったんだ。




『ねぇ、結崎さん。柚羽のこと好きなんでしょう?』



結崎さんがかんなさんを連れて店に来た日の数日後。


深夜、店にコーヒーを買いに、一人でやって来た結崎さんに、私はそう訊いたことがあった。



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