―Destiny―


結崎さんはなにも答えず、憂いを帯びた瞳で寂しげに笑うだけだった。



『どうして、彼女と切れないの? 二股?』



深い事情を知らなかった私は、少し腹を立ててそう突っ込んだ。



『……そう言われてもしかたないかもな』



結崎さんはゆっくりとした口調で、静かに微笑んだ。



『サイテー。結崎さんって、そういう人だったんだ』



あとになって知ったんだ。

結崎さんとかんなさんは、柚羽と出会う前に別れていたこと。


この時、狂気に満ちたかんなさんが結崎さんを縛りつけ、結崎さんと柚羽がひどく苦しんでいたことを……。


< 174 / 328 >

この作品をシェア

pagetop