―Destiny―
あたしは足元に転がった石ころを靴で軽く蹴飛ばした。
【来来軒】の目の前にある信号が赤に変わる。
行き交う車をぼんやりと眺めながら青に変わるのを待つ。
――あ、そうだ……。
制服の袖を少し上げ、腕時計を見る。
五時前……。
そろそろおばちゃんが帰る頃だ。
もうお昼に来れないって一言言って帰ろう。
あたしは踵を返すと、【来来軒】へと向かった。
入り口の引き戸には『準備中』という札がかけられていて鍵がかかっていた。
引き戸に耳を押し付けてみると、中からガタガタと物音が聞こえてくる。
「おばちゃーん、いる?」