―Destiny―
* * *
「……先生? どうしたの?」
「あっ、いや。なんでもない」
少し冷めてしまったコーヒーを村岡に差し出す。
村岡は一口飲んだあと、少し俯いて口を開いた。
「あたしね、奏汰と別れたんだ」
「……えっ?」
この二人だけは幸せになってほしい。
そんな願いもむなしく、村岡から語られる話を聞いて、僕のなかで何かが音をたてて崩れていく。
「先生は大将と知り合いなんでしょ?」
「………あぁ」
「大将の奥さんのことも、知ってる?」