―Destiny―
閉められた引き戸をノックしながら声をかけてみる。
パタパタとこちらに向かって来る音と、引き戸のガラス越しに写る、次第に濃くなる人影。
「あれぇ、柚ちゃんじゃないか!」
ドアを開けたおばちゃんが割烹着で手を拭きながら、あたしを笑顔で迎え入れた。
「なんだい? また食べに来たのかい? お母さんが作ったご飯が入らなくなるよ?」
「ははっ。違う違う。あのね、明日からもう来れないんだ」
「先生に怒られたんだろ?」
おばちゃんはニッと笑って、肘であたしの脇腹を小突いた。
「次バレたら謹慎だってさ」
「そりゃ仕方ないね。寂しくなるけどさ」