―Destiny―


あたしの肩に顔をうずめ、奏汰がボソボソと話し始める。


店の前を行き交う人たちが、驚いたようにあたしたちを見ていたけれど……。

今のあたしには、そんなこと気にもならなかったんだ。



「柚が好きなんだよ。柚の家庭を壊したくないって言ったくせに……」


「うん……」



涙がどんどんあふれてきて止まらなかった。


奏汰が好き。一緒にいたい。

たったそれだけの、純粋な想い。


それは……奏汰も同じだったんだね。



「――柚」



< 210 / 328 >

この作品をシェア

pagetop