―Destiny―
■ お父さんの気持ち
お母さんはただ黙って話を聞いていた。
背を向けたままのお母さんが、今どんな顔をしているのか、あたしたちからは見えない。
「……お母さん?」
重苦しい沈黙を破るように、あたしは小さな声でお母さんに呼びかけた。
「……無理よ。何をしたって」
「お母さん!? なんで分かってくれないの?」
「柚も奏汰くんも、昔のことを知らないからそう言えるのよ! 柚羽がどんなに苦しんでいたか。私がどれだけ、かんなさんを許せないか……」
振り返ったお母さんは、ひどく興奮していて。
大きな瞳からは、涙が止め処なくあふれていた。