―Destiny―


「……お父さん……」



会社から帰ってきたお父さんが、ひどく驚いた顔で立ちすくんでいた。


お父さんは、奏汰と、泣き崩れているお母さんを見て、すぐに状況を理解したようだった。



「……諒子。部屋に行こう」



黒い革靴を脱いで家にあがったお父さんは、座り込んでいたお母さんの身体を支えながら、立ち上がらせた。



「――柚。奏汰くんをリビングに連れて行ってくれるか?」


「……うん」



奏汰とのことを、お母さんから聞いていたはずなのに。

ずっと、沈黙を貫いてきたお父さん。


ドクンドクンと、心臓が鈍い音を立て始めた。



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