―Destiny―


お母さんはただ、過去のことを引きずって反対しているだけ。


時間をかけて話をすれば、きっといつかは。

そう思っていた。


だけど……。

お母さんが精神安定剤を服用するほど、苦しんでいたこと。

『どちらにもつかない』と言った、お父さんの苦悩に満ちた表情。




「――……雪だ……」



肌を突き刺すような冷たい風に吹かれながら、小さな雪がはらはらと舞い落ちてくる。

そっと伸ばした手のひらに落ちた雪は、儚くあっという間に消えていく。



結崎の家を捨てるとまで言った、奏汰。

家を捨てたからと言って、認めてもらえるものじゃない。

お母さんの傷は思った以上に深いから――……。


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