―Destiny―
身に覚えのない話に首を傾げるあたし。
そんなあたしの仕草に気づいた先生は、あたしを見てにこりと笑う。
「お礼に昼ごはんをご馳走したいと思って、御連絡させていただいたんですが……。……えっ? いえ、とんでもないです。……宜しいんですか?」
どうやらお母さんのOKが出たらしく、先生はニッと笑って親指を立てた。
でもあたしには、先生が何を考えているのか。
何をしようとしているのか。
全く予想さえもできずにいた。
電話を切ったあと、あたしはイスから立ち上がり、先生のもとに歩み寄る。
「先生? 今の電話、なに?」
「……保護者に嘘つくなんて、俺もとんでもない教師だな」
言って、先生はロッカーからコートとバッグを取り出す。