―Destiny―

■ 記憶



「――……ったく。おまえが車出すべきだろうが」


「俺、スポーツカーですから。四人乗ったら重くなります」



運転席の大将と、助手席の槙村先生。


二人は目的なんか一切教えてくれなくて、仲のいい痴話喧嘩をさっきから繰り広げている。



「……どこに行くの?」


「さあ……」



後部座席に座るあたしと奏汰は、二人の漫才のような喧嘩を見ながら、しきりに首を傾げていた。


奏汰に会うのは何日ぶりだろう。

あたしの家に来たあの日以来……。

そう経ってはいないのに、何年も会っていないような気がする。



< 245 / 328 >

この作品をシェア

pagetop