―Destiny―
■ 記憶
「――……ったく。おまえが車出すべきだろうが」
「俺、スポーツカーですから。四人乗ったら重くなります」
運転席の大将と、助手席の槙村先生。
二人は目的なんか一切教えてくれなくて、仲のいい痴話喧嘩をさっきから繰り広げている。
「……どこに行くの?」
「さあ……」
後部座席に座るあたしと奏汰は、二人の漫才のような喧嘩を見ながら、しきりに首を傾げていた。
奏汰に会うのは何日ぶりだろう。
あたしの家に来たあの日以来……。
そう経ってはいないのに、何年も会っていないような気がする。