―Destiny―


部屋に戻って着替え、山のように出された宿題を片付けていく。

夕方、六時を過ぎた頃に玄関から「ただいまー」という声が聞こえてきた。


お父さん、帰ってきた……。

今日あたしが【来来軒】に行ったことを、お母さん話すかもしれない。


いつもなら「ただいま」の声を聞くなり、すぐにお父さんを出迎えに行くのに。

あたしは胸をドキドキさせながら、少し間を置いてから忍び足で部屋を出た。


部屋を出ると、ダイニングに続く、閉められたドアにそっと耳を押し当てる。



「……ったく、柚ったら!」



あ、やっぱり。

お父さんが帰って早々に、お母さんはあたしが【来来軒】に行ったことを話してる。



「へー、そこのラーメン屋、そんなにおいしいのか」


お父さんは呆れるわけでも、怒るわけでもなく。

あたしが行ったラーメン屋に興味を示している様子。



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