―Destiny―


つぎに車が着いたのは、【土地売却中】という看板が立てられた、だだっ広い更地だった。



「ここは、柚羽さんが住んでいたアパートがあったんだ」



さっきの古着屋とは違って、アパートが建っていたという面影さえもない。



「永輝くんは、真夜中に柚羽さんに会いに来ていたんだよ」


「……真夜中に?」


「あぁ。その頃も、永輝くんのそばにはかんながいたからね」



あたしと奏汰が生まれる前の出来事。

柚羽ちゃんたちのことは、人伝いに話を聞くだけだったけれど、胸がしめつけられるくらいに悲しい話だった。


大将も、先生も、それに関わっていたのに。

今はただ、静かな笑みを湛えながら、ガランとした寂しい更地を眺めている。


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