―Destiny―
第六章
■ お母さんの過去
永輝さんと柚羽さんの軌跡を辿った帰り、あたしは家まで槙村先生に送ってもらった。
先生が一緒なら、お母さんに怪しまれないだろうという企み。
少し胸が痛んだけれど……。
本当のことを話して、お母さんがまた辛い思いをするのは嫌だった。
「――今日はすみません。突然、柚さんをお借りしてしまって」
「いえいえ、いいんですよ。柚ったら、学校ではマジメにやってるのね」
嘘がバレないように、先生はお母さんと直接顔を合わせて、嘘の弁解を始める。
あたしはそのやり取りを横目に、話を合わせながら、笑う。
コートのポケットに入れっぱなしのあたしの手の中には指輪が握りしめられている。
たったひとつの指輪。