―Destiny―


先生があたしに頼みごとをするなんて、きっと初めてのことだ。

あたしはすまなそうに言う先生に対して、ほんの少しだけ優越感に浸る。



「なに? 頼みごとって」



訊くと、先生は玄関のドアをちらりと見た。

その視線で、あたしはその頼みごとが、お母さんには知られてはいけないことなのだと悟る。



「柚羽さんの実家の住所、調べられる?」


「……柚羽ちゃんの?」


「うん。墓参りにでも行こうかと思ってさ」


「お墓参り? なんでまた……」


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