―Destiny―


柚羽ちゃんのこと、あたしはよく知らない。

柚羽ちゃんの写真を、悲しそうな目で見つめるお母さん。

気になって、一度だけお父さんに聞いたことがあった。



『柚羽ちゃんは、大好きな人と同じ日に、別々の場所で死んだんだよ』



その頃のあたしは、大人の恋愛ドラマの味を占めた中学生で。

大好きな人と同じ日に死んだという状況に、なにかドラマチックなものを感じた。



『どうして死んだの?』



不謹慎だとは思ったけれど、興味津々だった。

だけど……。

その興味はお父さんの一言で、粉々に崩れていき。

ほんの一瞬でも、わくわくしてしまった自分を心の底から恥じたんだ。


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