―Destiny―


「で? 俺のこと聞いてどうすんだよ」


「あっ、特に意味はないけど……」



うつむきながら、そっと手の甲で頬の温度を確認する。

まだ熱い。まだ、あたしの顔は真っ赤になっているんだ。



――カチャ……ッ



隣で何かの金属音が聞こえてきて、ふと奏汰を見る。


奏汰はタバコを口にくわえ、風を避けるようにして火の点いたシルバーのジッポを包み込んでいた。


そんな何気ない仕草。

お父さんも同じようにしてタバコに火を点けるのに。


ほんの少し顔を傾けながらタバコに火を点ける奏汰に。

あたしはますますドキドキしてしまう。



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