―Destiny―


「……奏汰くん」



にこりと笑って、先生は、奏汰のシャツの胸元から覗いていたタバコを箱ごと奪い取る。



「君はまだ十九だろ? タバコ吸うにはまだ早いな」


「……先生。今日も裏口からのご来店、ありがとうございます」



ニッと笑う奏汰を見て、それまで余裕の笑みを浮かべていた先生の表情がわずかに崩れた。



「……先生。大将と知り合いだったんじゃん。嘘つき」



口を尖らせながらあたしが抗議すると、先生は静かに笑う。



「……村岡は奏汰くんと知り合いだったのか?」


< 64 / 328 >

この作品をシェア

pagetop