―Destiny―
このまま、奏汰と一緒にいたら……。
あたしは延々と、奏汰の恋愛話に付き合うことになりかねない。
ひょっとしたら、恋愛の相談相手になってしまうかもしれない。
ただでさえ、真菜から協力を頼まれて。
複雑な気分で奏汰の情報収集をしていたのに……。
「――じゃあね」
店の前でたたずむ奏汰に、くるりと背を向ける。
ズキズキときしむ胸の音は、ずっと奥のほうで響いていたのに。
奏汰に背を向けた瞬間、その音はからだじゅうに広がり始めた。
「――なぁ、柚」
一歩。
奏汰から離れようと足を踏み出すと、奏汰の穏やかで低い声があたしを呼び止める。