―Destiny―
学校も夏休みに入り、奏汰と会う回数がほんの少しだけ増えた。
今日、奏汰は九時まで【来来軒】でバイト。
そのあと、少しだけあたしに会いに来るという。
会う場所は、あたしの家の近くの公園。
【着いたよ】
奏汰からのメールを合図にして、あたしは足早に玄関へと向かった。
「……柚? どこに行くの?」
「ちょっと、友達と会ってくる」
スニーカーを履くあたしに、お母さんが心配そうに声をかけてくる。
奏汰とのこと、まだお母さんに話していない。
いつか話そう。
そう思ってはいるのに、いつもいつも、きっかけがつかめずにいるんだ。