切なさに似て…
ハンドルを握る信浩は私をちら見して、眉を寄せた。

「何だよ、気持ちわりーな…」

「ふふふっ。何でもなーいっ」

「思い出し笑いかよ。気持ち悪いからやめろよなー」

さっきから顔が緩みっぱなしの私に、信浩は半ば呆れたような顔を見せ、口にタバコをくわえジッポを手にカチンッと金属が擦れる音をさせる。


信浩の吸うタバコの煙だけは、何か好きなんだ。

あぁ、信浩のタバコの匂いだなぁ…。って、安らぐ。


「…で?思い出すくらい、何がそんなにおかしいんだよ?」

煙を吐き出した口が動いた。

「あははっ。だって朝の信浩の顔っ。あははっ」

そう言いながら、また思い出したら笑ってしまった。


「…お前がらしくないことするからだろーがっ」

ちょっとだけ唇をへの字に曲げて、不機嫌そうな信浩にまた笑う私。
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