切なさに似て…
膝に空洞ができたズボン。

穴の空いた靴下。

綻んだ服の袖。


きらびやかな格好で出かけて行くあの人とは、比べようもない私の姿。


レナのお気に入りの靴下の、つま先に空いた穴を縫い合わせながら、その後ろ姿を見送った。

今日みたいに停められて、電気が点かない夜。


『レナもよーちえんいきたい』

そう言ったレナは、泣きじゃくり、黄色いバックを抱え部屋の隅っこに丸くなった。


黄色い幼稚園バックは、いつだったかゴミステーションにこれみよがしに捨てられてあり、レナが勝手に拾って来た物で、使い古しとはいえまだまだ十分綺麗だった。


レナが泣けば私はお菓子を買わざるを得なく、でも、私が欲しいものは何も手に入らない。

泣きたいのはこっちの方だ。

そんな私の口から出た不満。


『レナは泣けばいいと思ってるんでしょっ!!泣いたってダメなんだからっ!!』

私がそう怒鳴ると、レナは縫ったばかりの靴下と黄色いバッグを片手に、布団の中へと身を隠した。

レナが布団の中で、声を押し殺して泣くようになったのは、多分それからだ。


4歳のレナに家の事情が、到底わかるわけがなく。

10歳の私には、この現実の世界は絶望でしかなかった。
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