切なさに似て…
『最初から言う通りにしてりゃいいのに…』

もし、あの時。

私が信浩の差し延べた手を握り返してたら、どうなってたのか…。


考えるのが怖い。


『遠慮なんかすんなよ』



遠慮なんかじゃない。


遠慮なんかじゃない。


遠慮なんか、してない。


さりげなく見せる信浩の優しさに、甘えてしまいそうになる自分の心が怖い。

選んだ選択肢が間違いだったって、気づきたくないから。


これで良かったって思っていたかったから。

惨めになりたくなかったから。


…遠慮なんかじゃ、ない。


遠慮だとか、気を遣うとか。

そんなんじゃなくて。


認めたくなかったから…。
< 118 / 388 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop