切なさに似て…
会社を出た景色は真っ暗で、冷たい風が頬を刺す。

「…頑張り過ぎたかも」

星さえもない空を見上げ、そう呟いた。


時間はすでに20時になろうとしている。

寒っ…。


これからクリーニング屋さんに寄って…。

もう信浩は仕事から帰って来てるから…。

晩御飯はチャーハンかなー。

ってか、作ってんのかな。

そんなことを考えながら、ジャケットのボタンをしめて表通りへと歩き出した。


黒っぽい車がハザードをつけ路肩に停まっている。

その車は、信浩の車だってことがすぐにわかった。


…彼氏でもないのにお迎えですか。

可愛げなく、捻くれた言葉を心の中で吐き捨て、その車まで近づいた。


車の主はそんな私に気づき、顔を上げ助手席の窓を開ける。


「お疲れ」

そう言うと、早く乗れと顎で差し窓を閉めた。

「クリーニング屋に寄ってね」

車に乗り込んだ私は、何で迎えに来たかなんて問わずにそれだけを告げた。


「はいよ、っと」

信浩はそうリズムカルに答え、車を出す。


普段より遅いから迎えに来ただけだってことは、スウェット姿を見れば聞かなくたって一目瞭然だった。

今や私の帰る場所は、あの古臭いマンションしかないんだから。
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