切なさに似て…
「はいはい」
声と共に、ガチャンッという金属音が廊下に響く。
ドアがほんの少し開き、気味悪く笑う信浩の顔だけ出てきた。
部屋に充満した煙草の匂いと一緒に、信浩がシャワー後にしかつけない香水、ヴィヴィアンのレットイットロックの紅茶っぽい香りが、ひんやりした廊下へ逃げていく。
隙間から強引に体を滑らせた。ブーツを脱ぎ捨てると勝手に、暖房の行き届いた部屋へ上がり込む。
「外寒いよー、マジで。あっ、お邪魔しまーす」
「順番逆だからな?」
「んな細かいこと、気にしなーい」
馬鹿みたいに笑い、窓際の天井に突っ張られた白い棒からハンガーを取り濡れたジャケットをかける。
「もしかして、手ぶら?」
そう信浩に聞かれたのは、手に持っていた鞄を床に置いた時。
「そうだよ、当たり前じゃん」
「はいはい、お前はいつもそうだよな。これっぽっちも期待はしてないつーの」
両手を上げパッと手の平を見せると、信浩は呆れた顔をし、屈み込んで冷蔵庫を開けた。
中から銀色をした缶ビールと、オレンジジュースの瓶を取り出す。
それを見て私はキッチンの水切りからグラスを手にし、伸浩の前に差し出した。
豪快な音を立て注がれたオレンジジュースに、カシスシロップを加えステアリングする手つきは慣れたもので、ノンアルコールのカシスオレンジができあがる。
カシオレのグラスと、信浩の手の中でシュワシュワと炭酸が弾いているそれを合わせ、「お疲れ!」と、私達は声を揃えた。
声と共に、ガチャンッという金属音が廊下に響く。
ドアがほんの少し開き、気味悪く笑う信浩の顔だけ出てきた。
部屋に充満した煙草の匂いと一緒に、信浩がシャワー後にしかつけない香水、ヴィヴィアンのレットイットロックの紅茶っぽい香りが、ひんやりした廊下へ逃げていく。
隙間から強引に体を滑らせた。ブーツを脱ぎ捨てると勝手に、暖房の行き届いた部屋へ上がり込む。
「外寒いよー、マジで。あっ、お邪魔しまーす」
「順番逆だからな?」
「んな細かいこと、気にしなーい」
馬鹿みたいに笑い、窓際の天井に突っ張られた白い棒からハンガーを取り濡れたジャケットをかける。
「もしかして、手ぶら?」
そう信浩に聞かれたのは、手に持っていた鞄を床に置いた時。
「そうだよ、当たり前じゃん」
「はいはい、お前はいつもそうだよな。これっぽっちも期待はしてないつーの」
両手を上げパッと手の平を見せると、信浩は呆れた顔をし、屈み込んで冷蔵庫を開けた。
中から銀色をした缶ビールと、オレンジジュースの瓶を取り出す。
それを見て私はキッチンの水切りからグラスを手にし、伸浩の前に差し出した。
豪快な音を立て注がれたオレンジジュースに、カシスシロップを加えステアリングする手つきは慣れたもので、ノンアルコールのカシスオレンジができあがる。
カシオレのグラスと、信浩の手の中でシュワシュワと炭酸が弾いているそれを合わせ、「お疲れ!」と、私達は声を揃えた。