切なさに似て…
どうせ、金銭面で一悶着があったのだろう。“あの人”のことだ、レナにバイトさせて授業料は自分で払えとかなんとか、言ったのだろう。
バイト先が決まるまで帰ってくるな、通帳寄越せだとか。そんなような。冷酷無慈悲なことを言いそうな人だ。
いや、現実。私はそう言われたから、“あの人”が待ち構えるあんな家に寄り付かなくなったんだ。
20分後、浴室から出ると、玄関にはまだ俯いたままのレナが立ち尽くしていた。
堪らず、口を開く私の、今までで一番冷たい声が出せたんじゃないかと思うくらい。
「欝陶しいから入ってくれない?帰りたきゃ別に構わないけど」
私はドライヤー片手にちらっと冷ややかな目線を送ると、レナに背中を向け部屋の中央に座り込んだ。
渋々か嫌々かはさておき、ようやくレナはブーツを脱ぐ覚悟が出来たのか、前屈みに体を下ろす。
部屋に足を踏み入れたのはいいが、躊躇う足は静止し台所付近で立ち往生する。
「心配しなくても私の部屋じゃないし、部屋の主も帰って来ないから。今日は私が布団の日だから、あんたはベッド」
髪を乾かしながらそう言い、ベッドがある後ろへと指を差す。
「その押し入れの下から適当に服見繕って着替えたら?さっさとしてよ、もう寝たいから」
明日も仕事だし。そう付け加え鏡越しにレナの姿を追う。
バイト先が決まるまで帰ってくるな、通帳寄越せだとか。そんなような。冷酷無慈悲なことを言いそうな人だ。
いや、現実。私はそう言われたから、“あの人”が待ち構えるあんな家に寄り付かなくなったんだ。
20分後、浴室から出ると、玄関にはまだ俯いたままのレナが立ち尽くしていた。
堪らず、口を開く私の、今までで一番冷たい声が出せたんじゃないかと思うくらい。
「欝陶しいから入ってくれない?帰りたきゃ別に構わないけど」
私はドライヤー片手にちらっと冷ややかな目線を送ると、レナに背中を向け部屋の中央に座り込んだ。
渋々か嫌々かはさておき、ようやくレナはブーツを脱ぐ覚悟が出来たのか、前屈みに体を下ろす。
部屋に足を踏み入れたのはいいが、躊躇う足は静止し台所付近で立ち往生する。
「心配しなくても私の部屋じゃないし、部屋の主も帰って来ないから。今日は私が布団の日だから、あんたはベッド」
髪を乾かしながらそう言い、ベッドがある後ろへと指を差す。
「その押し入れの下から適当に服見繕って着替えたら?さっさとしてよ、もう寝たいから」
明日も仕事だし。そう付け加え鏡越しにレナの姿を追う。