切なさに似て…
荷物を抱え、相変わらずセンスのよろしくない女の耳元で、たっぷりの嫌味を吐き捨てた。

「レナなら、もうここには帰って来ないから。一稼ぎ出来なくて残念でした」

「帰って来ないって、どういうことよ!?」

ギョロっと目だけを向け、私を睨む。


「…自分の胸に手を置いてよーく考えたら?自分の娘に売りを勧める女の元には帰らないって言ってんのっ。そんなに金が欲しいなら自分がやれば?」

あっ、出来ないからレナにやらせようとしたんだ?わざとらしくそう付け加えて、カッと目を見開く2人に私は踵を返す。


「ちょっと待ちなさいよっ!!」

取り乱す荒々しい女の声を背中に受ける。


「あっ、あと。手切れ金。少ないだろうけど受け取ってよ。その代わり、金輪際関わり合わないでね。こっちは慰謝料貰ってもいいくらいなんだから」

最高の嫌味を言いながら、ジャケットのポケットからお札20枚を取り出し、背中を見せたまま後ろへと放り出した。


「さよーなら」

何の感情も込めず言い放ち、手を離すとバタンッとドアが閉まる。
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