切なさに似て…
「…ひぃぃっ、冷たっ。信浩っ!お湯、お湯っ!!」

掬って顔に浸してみたのはいいのだけれど、あまりの冷たさに声にならない悲鳴を上げる。


「やっと起きたか…。ガス点けたぞ」

「…はぁーっ。びっくり…」

手の中で洗顔料を泡立てながら、鏡の向こうにいる信浩を睨みつけた。


「寝起きの悪い柚果が悪い」

そう言い残し私の前から消え去った信浩は、とっくの前に背広を着こなしていた。

しばらくすると代わりにコーヒーの香りが漂って来る。


「ごもっともだね…。うん」

と、独り言を呟き、顔を洗い流しタオルで拭きあげる。


私の寝起きは頗る悪い。

目が開かないから、なかなか起きられないのだ。

意識的に起きていても、重たい瞼のおかげて寝てるんだか起きてるんだかさっぱり。

信浩に起こしてもらわないと、一人じゃ起き上がることはないんじゃないかと思う。


起きたくないのが本音なんだけど…。


またしても長い一日がやって来たかと思ったら、朝という現実に背いてやりたくなる。
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