切なさに似て…
「座れば?」

信浩はそう言って首元のネクタイを緩め、目だけをきょろきょろとしていた私を見下ろす。


「あ、うん…」

促されてソファーに腰を下ろしてはみたものの、ちっとも落ち着かない。全く知らない人の家にお邪魔している気分。


「先にシャワー浴びてくれば?風邪ひくぞ?」

「…え?あ、私はあとでいい」

じゃ、先に浴びるてくる。と、ワイシャツのボタンを外しながら、リビングの奥の扉に消えていく信浩の背中を目で追いかける。


その背中は週末だからか、疲れているようにも見える。


すぐにリビングへ姿を現した信浩は、今度は廊下の向こうへと消えていった。

信浩がいなくなってどうも落ち着かなく、鞄から携帯を取り画面を開いた。時間は23時をまわっていた。


そんなに遅い時間ではない。にしても、気になるのはあの一緒にいた女の人。


どこいったの?この部屋の何処かに隠れてるとか?


『今日は帰ったら一緒に飲もうって言ったじゃないのよ』

この会話って。先輩とする会話なのかな、彼女。だよね?

土曜日の夜に一緒にいるなんて、ないよね?
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